03/09(日) SALLE GAVEAU@MOSAIC MUSIC FESTIVAL Singapore

03/09(日) SALLE GAVEAU@MOSAIC MUSIC FESTIVAL Singapore, MOSAIC STUDIO に行って来ました。セットは以下、

SALLE GAVEAU:
01. Alloy鬼怒無月作曲、鬼怒 ag、約10分)
02. 800% (林正樹作曲、鬼怒 eg、約10分)
03. Crator (鬼怒無月作曲、鬼怒 eg、約13分)
04. Arcos (鬼怒無月作曲、鬼怒 ag、約11分)
05. Tingo (佐藤芳明作曲、鬼怒 eg、約10分)
06. Null Set (鬼怒無月作曲、鬼怒 eg、約7分)
07. Strange Device (鬼怒無月作曲、鬼怒 eg、約9分)
08. タイトル未定 (喜多直毅作曲、新曲、鬼怒 eg、約11分)

Encore:
09. タイトル未定 (鳥越啓介作曲、新曲、仮:ロカタン、鬼怒 eg、約5分)

約96分

SALLE GAVEAU Member:
鬼怒無月(g)( eg: Vanzandt Stratcaster Clear Blue、ag: ガットギター )
喜多直毅(vn)
佐藤芳明(acc)
鳥越啓介(cb)
林正樹(pf)



SALLE GAVEAU in Singapore!SALLE GAVEAU の海外進出第二段は、ここ Singapore、4年前に出来た Esplanade で毎年行われ、今年で4回目を迎える国際総合ミュージック・フェスティバル、スタッフにより厳選された20ヶ国から400以上の様々なジャンルに渡るグループが結集し、8日間に渡り複数会場で毎晩素晴らしい音楽を繰り広げるフェスティバル、SALLE GAVEAU はその3日目、日曜の夜と言う最も期待される時間枠、じっくりとその芸術的音楽を堪能できる意味での Recital Studio、MOSAIC Studio にてライヴを行いました。当初心配されたのは、ここ Singapore での SALLE GAVEAU の知名度の低さからの集客、観客動員のみでしたが、前日の In The House FM へのリーダー鬼怒さんの出演と本日のライヴの宣伝、様々なメディアでの現地スタッフの宣伝の甲斐あってか、蓋を開ければ満員御礼、立見も出る盛況ぶり!この時点でライヴの大成功は約束されているといっても過言ではありませんね。

会場の MOSAIC Studio は楕円形の上辺にステージが低く設置されそれを取り巻くように後ろに行くにしたがって高くなる様に客席が設置されている形、小編成でのアンサンブルを聴かせるには絶好の場所とも言えます。しかし、流石に PA 技術はそれ程高く無いようで、ピアノ、ヴァイオリン、アコーディオン、ギターのボトムからミドルにかけて少し篭る様で、少し丸まって音のクリア感、エッジ感が損なわれている印象、その中で、唯一ボトムからミドルのクリア感とエッジ感を保てた鳥越さん、駒とホールから2系統で拾った音を2系統別々でイコライジング出来るあの白箱がその効果を見事に出している気がしました。

本日の鬼怒さんは、Vanzandt のクリアブルーのストラトイコライザーがついているエレガットの2本、佐藤さんはいつもの Victoria のアコーディオン、鳥越さんはコントラバスにエフェクト類もしっかり持ち込んでいらっしゃいました、さぞ大変だったことでしょう、喜多さんは流石に最近購入されたオールドではなく、焦げ茶色のお手頃ヴァイオリンにて、まああのオールドは海外に持って出るのは無茶ですからね、それで最近の演奏はこちらを使っていらしたのかと、納得。林さんは嬉しい Steinway & Sons!林さんにはやはりスタインウェイがよく似合います。

冒頭、幕を開ける1曲目は勿論この曲「Alloy」です。PA の状態を自らのテクニックでカバーしつつ、全員で合わせられたその音の溶け合い方は極上そのもの!行き成りのこの素晴らしい音に、会場の全ての観客が息を呑むのを感じた瞬間でした。先ずソロを取るのは佐藤さん、かなり気合入りまくっているようで行き成り分散コードにエルボー打ちまくり、身体全体を使っての激しいソロ、会場が沸き立ちます。続けて林さんがソロを取り、激しいタッチでアブストラクトに展開し、綺麗な装飾音を散りばめつつアグレッシヴに弾き倒し、負けじと喜多さんが切り込みつつソロへ、これまた行き成り激しく弾き倒しつつ喜多直毅ここにあり的王者の風格を前面に打ち出す。そして、個々がソロを取っている際も合いの手とは思えない装飾音を絡めつつ煽るその他のメンバー、分散と融合を繰り返しつつ、最後に大団円的に一体化してエンディング!もう1曲目とは思えない観客の熱狂と興奮!いつもより長めに「Alloy」を演奏し、行き成りかましてくれます、SALLE GAVEAU!

マイクを取るはリーダー鬼怒無月!朴訥ながらツボを押さえた英語 MC も昨日の FM 番組でのインタビューに引き続き、演奏曲とメンバー紹介もこなれたもの、次曲「林正樹作曲の800%!」のコールに、観客は「えっ、800%?」と聞き返す。やはり、意外なタイトルのようで、初めてタイトルを聞く人の気を引くようですね。

そして美しく、厳かに曲が奏でられていく、ここで再び炸裂する林さんのソロ!先程とは打って変わった華麗なソロに観客はぐっと引き込まれ、続く5人の奏でる豪華絢爛なアンサンブルに更に魅了される。間奏に飛び出す喜多さんのテーマソロ!そのフレージングとヴァイオリンの音色の圧倒的な素晴らしさに、音楽の女神 Muse すらも思わず跪きそう。黒のパンツに深紅のシャツできめたヴァイオリンの貴公子は、すっかり威厳と風格を増し、いまやヴァイオリンの王様であることを強く実感しました。そして更に展開してゆく美しきアンサンブル、素晴らしい魅惑のアンサンブルに観客の心はすっかり釘付けになったようで、演奏を終えるとウットリとしたため息がもれる様子が伺えました。

続いて演奏されたのは、本当に久しぶり(シンガポールのお客さんには全てが初めてだと思いますが)の「Crator」、King Crimson とタンゴの融合、宇宙とタンゴの融合を思わせる鬼怒さんのこの大曲、至極、究極の約13分間の演奏、久しぶりに堪能させていただきましたが、ここのところの 2nd Album Recording を経てか、また描き方が大きく変わった印象、特に鬼怒さんのソロがまた圧巻!Robert Fllip も驚愕するであろう正確無比なシーケンスフレージング、そして続く喜多さんとの驚異のハイスピードユニゾン、鳥肌どころか息をするのも忘れ、人類が築いてきた音楽的英知の更に遥か高みにて奏でられるこの至高の音楽にただただ魅了されている自分がいました。

再びマイクを取る鬼怒さん、それ程気の効いたことを話しているとは思えないのですが、鬼怒さんマジックが宿っているようで、一言一言、その Funny な言い回しに観客は引き付けられるようです。次曲が「Arcos」であることから、"Don't Worry" と言えば、ドッと受ける感じ、何か既に地元で長く活動しているミュージシャンのようにすら思えてしまいます。

続いては、全国百万人の鳥越さんファンの方お待たせしました的コントラバスソロによる導入、本日のソロはその見事なアーティキュレーションによる情感の込められたフレージングが見事!ダブルストップやトリプルストップも絡めつつ、大胆に、そして斬新に鳥越ワールドを描き切りました。鳥越さん一人を残し、捌けていた他のメンバーが徐々に戻って演奏に加わって行きます。先ずは鬼怒さんが柔らかいカッティングから、スッとコントラバスの音色に寄り添う様に加わり美しきデュオパートとなる。更に頃合を見て林さんが、美しき音の雫をこぼれ落とすように加えつつ入ってきてトリオパートにて美しく、そして哀愁を帯びた世界を描いて行く、演奏も後半に差し掛かる頃、喜多さんと佐藤さんがステージのそれぞれ楽器につき、いよいよクライマックス!喜多さんが切り込むように印象的なフレージングで入り、それを支えるように佐藤さんが柔らかい伴奏を添えてクインテットに、そして5人による、ため息の出るほどに美しく、物悲しい哀愁の演奏を見事に纏め上げる。

行き成り空間を切り裂くように単発的にキメで入ってくるヴァイオリンとピアノ、コントラバスグリッサンドが絡まり、そして5人全員によるテーマ演奏へ、佐藤さん作曲のインド音楽とタンゴの融合曲「Tingo」、冒頭のテーマ提示に続いて鳥越さんの不気味なアルコが低く響く中、喜多さんの狂気のヴァイオリンソロへ、パガニーニカプリースを思わせる超絶技巧のソロが狂おしく炸裂し、続いて突然パーカッシヴにリズムを刻みだす、それを契機に鬼怒さんがソロへ、喜多さんのパーカッシヴなリズムを受け、沖縄風なメロディーを被せ、喜多さんのリズムの裏を取るようにソロを取る、頃合を見て堰を切るように他のメンバーが入ってきて怒涛の展開へ、全員による超高速ユニゾンによる疾走を繰り返し、ティハイで間奏を締め、テーマに戻る、5人による超絶的テーマ変奏が更なる狂気感を煽り、再度のティハイで演奏を纏め上げる。

鬼怒さんがマイクを握り観客へ謝辞を述べつつ曲の説明、「この曲は佐藤芳明の書いた曲で、インド音楽とタンゴというクレイジーコンビネーションによって書かれている、タイトルもインドとタンゴのスペルをを掛け合わせて Tingo、まあ要するにそういうことです。次に演奏する曲は、それ程ラウドじゃないし、とってもキュートな曲、楽しんでもらえると思う、Null Set」に、またまた観客大ウケ、MC は語学力じゃないですね、ホント。

美しきアンサンブルで一見キュートに、その実静かな仕掛け合い満載にて紡がれていく、鬼怒さんの大きな優しい心に包まれるかのようなギターソロが、他のメンバーのこれまた美しきサポートを得て、聴く者の心を優しさで洗い流す様に演奏され、それを受けた佐藤さんが口笛と絡めつつファニーに、優しくソロを取る、またまた悪戯心タップリに喜多さんがファニーな装飾音を絡め、それを嬉しそうに林さんと鳥越さんが顔を見合わせ、2人で微笑むように喜多さんを見つめる。愛に溢れて美しく、そして聴く者を至福の中へ導く素敵な演奏でした。

続いては、打って変わって不気味なイントロ、「Strange Device」です。不気味な怪物の足音を思わせる鳥越さんのアルコとボディー背面叩きが響く中、一頻りテーマが変奏される。続いて鬼怒さんが他のパートと呼応するようにソロを取る、弾き倒す形ではなく、メンバーそれぞれとのフレーズの交換を楽しむように様々な展開を描き出す。その中で、徐々に熱を帯び、時折レガートのパッセージも飛び出す、それに刺激を受けてか林さんと佐藤さんのアブストラクトなフレーズ交換が炸裂!続いて、そのまま林さんのソロに移行しつつも、他のメンバーはテーマ伴奏に静かに移行、見事なレイヤーを保ちつつ、クレッシェンドして行き、豪腕一閃強烈にまとめ上げる。

鬼怒さんマイクを握り謝辞を述べつつ「次は最後の曲になるけど、楽しんで貰えた?(Did you enjoy this ?)」、勿論観客いっせいに「Yes!」、「じゃあ、また来年も呼んで貰えるかな?」にこれまた大きな拍手、「次は喜多さんの曲で No Name、New Tune だ、ありがとう!」

冒頭の喜多さんのテーマ演奏がまた冴え渡り、他のメンバーも見事に音を合わせ、ピアノ、ギターも絡めたユニゾンもバッチリ。続いて林さんがソロ、テーマの変奏も見事に取り入れつつ、華麗にそして壮麗に描き上げ、全員のテーマ演奏を呼び込み再び今度は愁いを帯びた重めのタッチにて林さんソロ、呼応して、一気にハイスピードの連続レガートフレーズソロを鬼怒さんが差し込み展開を作る。その流れを受けつつも発展させる佐藤さんの分散フレージングとレガートフレージングによる凶器感溢れるソロを全身全霊でまさに弾き倒す、全員の切れ込むような単発的ユニゾンで緊張感を煽りつつ、行き成りブレイク、狂おしい狂気のヴァイオリンソロが何処までも何処までも響き渡っていく、切り裂くようにアーディオンが入り、全員によるテーマ演奏へ、そしてこの壮絶な美しき音楽絵巻もエンディング。万雷の拍手の中、鬼怒さんがメンバー紹介し、感謝を述べつつステージ奥へ下がる。

もの凄い拍手喝さい、勿論アンコールを求める拍手が続き、メンバーがステージに戻ると、歓声が飛び交う。アンコール曲は、何と鳥越さんの「ロカタン(仮)」、高速ロカビリーベースが疾走する中、喜多さんのヴァイオリンも冴え渡る。先ずは佐藤さんがこれまた激しいソロ、呼応するように鬼怒さんがフランジを効かせ浮遊感を持たせつつ高速ソロを弾き倒し、喜多さんがこれまた狂気の高速ソロを炸裂させる、テーマに戻り林さんが様々なバリエーションで装飾音とフレーズを載せてきて、見事な形で最後も纏め上げる!

もう熱狂の観客が万雷の拍手と共に完全総立ちのスタンディングオベーション!それに応え、SALLE GAVEAU の皆さんもステージ前に一列になって手をつなぎつつ手を挙げ、そして全員でのお辞儀にてライヴの幕を閉じる。


素晴らしいライヴでした、終演後にはお客さんの多くがCDを求め、そしてサインを貰うべく列を作っていまして、まさに大スターのそれでした。このシンガポールにて熱狂に包まれつつ、同じ日本人として誇らしく感じました、大成功ですね。



n.p. Salle Gaveau「Alloy