04/13(金) RIO 2007 France Friday, April 13th@Cap’Decouverte

eiji002007-04-13

04/13(金) RIO 2007 France Friday, April 13thCap'Decouverte に行って来ました。

Salle Gaveau:
01. Alloy鬼怒無月作曲、鬼怒 ag、約9分)
02. Parade (鬼怒無月作曲、鬼怒 LP、約7分)
03. Pointed Red (鬼怒無月作曲、鬼怒 LP、約9分)
04. Tempered Elan (鬼怒無月作曲、鬼怒 LP、約9分)
05. Seven Steps to "Post Tango" (佐藤芳明作曲、鬼怒 LP、約14分)
06. Nullset (鬼怒無月作曲、鬼怒 LP、約6分)
07. Crater (鬼怒無月作曲、鬼怒 LP、約12分)

約71分

Salle Gaveau Member:
鬼怒無月(gt)
( LP:Bacchus Les Paul Model、ag:ガットギター:新調)
喜多直毅(vn)
佐藤芳明(acc)
鳥越啓介(cb)
林正樹(ep)


ZAO:
9曲演奏、最後の曲(約14分)で喜多さんゲスト参加!

約84分

ZAO Member:
Faton CAHEN(pf)
Yochk'o SEFFER(sax)
Gerard PREVOST(b)
Francois CAUSSE(dr)

Special Guest:
喜多直毅(vn)



遂にやってきました!Rock In Opposition 2007 France がようやく開催されます!Magma, Faust, Peter Bregvad Trio, Present, Mats & Morgan, ZAO, Guapo, NeBeLNeST, Salle Gaveau の現世界最高とも言えるレベルで各国にて Opposition の姿勢を保ち、先鋭的かつ前衛的な音楽を生み出すべく活動を続ける9バンドが、フランスに結集しました。これから3日間に渡り、この素晴らしいバンドのライヴが行われ、そして合間には Workshop 等も開催されるということで、世界中からプレス、レーベル関係者、とても濃いリスナーの方々が大挙して集まっていました。

そのトップを切る形で Salle Gaveau のライヴが行われる訳です!やはり第一回目と言うこともあって、会場、開演ともに押す感じでしたが、ようやく会場内の照明が落ち、ステージにスポットが当たります。先ずは、5人程がステージに上り、その中に Present のリーダー Roger TRIGAUX の姿が見えましたので、どうやら主催者挨拶から始めるようです。フランス語中心ですが5人の中の1人が時折英語にて通訳を加え補足する形で挨拶が終了、そして遂に Salle Gaveau がステージ上の主催者からコールされて登場します!挨拶を終えた Roger TRIGAUX は何と私の斜め前に座って、そのまま Salle Gaveau のライヴを楽しむようです。

RIO 2007 France の冒頭を飾る記念すべき1曲目は一昨日の@ le triton に引続き「Alloy」、当然持っていらっしゃる楽器は基本的に一昨日の@ le triton と同様ですが、林正樹さんはこの日準備された完全なフルサイズ、立端の長い Steinway & Sons、状態も完璧!こういうピアノで林正樹さんに演奏していただけ、かつその場に居合わせることが出来るのは夢のような出来事で、その上、この最高のシチュエーションでの Salle Gaveau メンバーとしての林正樹さんの演奏に立ち会えるのは夢をも超えた無上の幸せ以外の何物でもありません。そして、Salle Gaveau の皆さんには広いステージが良く似合います。鬼怒さんのカウントから演奏開始、冒頭のテーマ合わせから全員の音のソリッド感が凄まじい!広いステージを十二分に活かした派手な動きで縦横無尽に超人的なフレージングを伴なって切れ込んでくる喜多さん、それを受け止めるように軽やかなタッチながら極上のパッセージを走らせる林さん、鬼怒さんのカッティングの切れ込み具合も凄まじく、佐藤さんは喜多さんの動きと対比させるようにクールにしかし激しく蛇腹叩きを交えながら音像のエッジを整え、鳥越さんもいつもよりも大きく、かつ激しくボディ裏面叩きとスラップでパーカッシヴにサポートし、凄まじく衝撃的な構築性を持ち、かつ個性豊かに溶け合う音像を生み出し、とても濃い会場の観客一同が一気に黙らせ、その観客が受けた衝撃の凄まじさをひしひしと感じさせる畏敬の雰囲気、空気感が会場を支配していました。まさに衝撃の"Alloy"[合金]サウンド! 行き成り一曲目からスタンディングオベーション状態で拍手を送る観客が何人もいます。その中に狂喜乱舞の大喜びで、かつスタンディングオベーションでこの Salle Gaveau の衝撃の音楽を大歓迎する Roger TRIGAUX の姿が一際目立っていました。

2曲目に畳み掛けるように持ってきたのは、@ le triton に引続き「Parade」、導入は林さんのソロから、興奮冷めやらぬ観客の心を落ち着けるかのように美しいながら暗黒フレーバーを伴なったクラシック調のピアノソロが奏でられ始める、世界が栄華の極みから崩れ落ち、壊れて崩壊して行くかのような、そして、聴く者をそのまま異次元空間へ誘う様な妖しいピアノの調べを導入とし、鳥越さんのアルコが更に空間を暗黒的に染め上げつつそのままベースランニングに移行し、全員のテーマ演奏に、しなやかで力強い鳥越さんのランニングベースにて道の大枠が形作られ、林さんの装飾音を交えつつの力強いダイナミズム溢れるタッチの鮮烈なフレーズが音像の立体感を鮮やかに生み出し、佐藤さんの激しいアクションによる分散フレージング伴奏、喜多さんの身体全体を使った微分音パッセージがエキセントリックに時空の歪みをも音楽的に表現します、そんな鮮やかな極彩色彩られた異次元空間内の音によるストリートを、鬼怒さんがレスポールを用いてのメインメロで強烈に、鮮烈にそして力強く香り立つ程の個性を放ちつつ行進をするように進んで行く、それに負けじとステージの大きさを利しての派手なアクションで喜多さんが鬼怒さんの行進を邪魔するように鋭角的にフレーズを取り、更に空間を歪めるように林さんが眩いばかりの強烈な光を放つアブストラクトなパッセージで音像を崩しにかかる、全員が斬り合わんばかりに仕掛けあう音楽的波状攻撃が、狂おしいばかりの切れ味を持ってダイナミックにぶつかり合う。その凄まじき演奏に当然ながら観客は再び熱狂を持って迎える。

3曲目は「Pointed Red」、冒頭は切れ味鋭い喜多さんのバイオリンソロから導入、触れるもの全てを切り裂くカマイタチの如き切れ味鋭い音像に鬼怒さんがカッティングでスッと入り込み、喜多さんを抑え込むように音像を整え、佐藤さん、鳥越さん、林さんが空かさず続き、全員が入った形でテーマユニゾンへ、その後サッと引くように空間を作り鬼怒さんのソロに移行、ワウをかけた狂気のギターフレーズが超高速、風速60m超で暴れまわる。全てをなぎ倒して進行して行き、そこで出来上がった空間を使って、林さんと佐藤さんの丁々発止の掛け合いが始まる。次々と目まぐるしく場面を切り替え合い、主導を奪い合うように高速ユニゾンと対位フレージングが、キメとして交錯しまくるトンでもない演奏、その中でも広い物理空間を大胆に活かしたアクションを伴なう喜多さんの音の存在感は際立つ、そして改めて感じる Salle Gaveau の演奏の凄まじさ。演奏後やはり三度大爆発の観客席!

ここで鬼怒さんの英語 MC、それぞれのメンバーを紹介する度に割れんばかりの拍手が巻き起こる、そしてさり気なく CD の宣伝を絡ませつつ、次曲のタイトルコール。

4曲目は「Tempered Elan」、残念ながら DVD には収録されていませんが、RIO 2007 のこの舞台では外したくないこのナンバー。流石に鬼怒さんの組まれるセットは考え尽くされていますね。冒頭静かに佐藤さんのアコーディオンによる音響的フレージングが空間を開き、林さんの軽快な高音アブストラクトフレーズがサウンドレイヤーを重ねる。特に本日はフルサイズの Steinway & Sons の美しき高音が林さんのタッチでものの見事に空間を彩り、更に鳥越さんのベースランニングが美しき音楽的色調を整える、零れるような美しいトーンで鬼怒さんのギターがテーマ演奏、喜多さんがその裏を取るように美しきヴァイオンによるテーマ演奏を重ね合わせる。美しい、限りなく美しく静謐なる音響空間がたおやかに緩やかに開けてゆく、その様の余りの美しさに全ての観客が息を飲み、魂が惹き込まれていく様子が空気を伝わって感じられる。そしてその空間内を狂おしいばかりに喜多さんのソロがどこまでも遠くへ流れてゆく、伴なう鳥越さんのアルコがまた美しい限り、人類はついに音楽的至高の世界、天国とはかくあるべしとでも言えるこの世界を構築するに至った。RIO 2007 に集う世界中の濃い音楽ファンもこの至高の演奏には大絶賛!何故かフランスなのに、「ブラボー!」の賞賛の声が飛び交う、予定調和ではない、心底驚きに触れた心が発する魂の叫び。

5曲目は佐藤芳明さんの傑作大曲「Seven Steps to "Post Tango"」、激しい情熱を内に秘めつつクールに気品漂う佐藤さんのアコーディオンによる冒頭のメインテーマが狂おしいまでに美しく響き、そこに対照的に広いステージを利して所狭しと体全体を使って先鋭的なフレージングで挑発的に扇情的に絡んでくる喜多さん!鳥越さんのパーカッシヴなベースが力強く低音部を支え、林さんの煌びやかな極上のタッチが流麗に気品の高さを引き立たせ、鬼怒さんのワウをかけたギターが音像に厚みを加え整えられた音楽的舞台上を佐藤さんと喜多さんが対峙し、雌雄を決するかのようにソロを取り合う、その様は鬼怒さん主審、鳥越さんと林さん副審にて2人が火花散らす戦いを行っているかのよう。先行は喜多さん、舞台上を舞うかのように激しい動きを伴ない情熱を突き詰めていったところに現れてくる狂気感を前面に出した破滅的かつ悪魔的なフレージングにて攻撃的ソロを取る、これを受けた佐藤さんが続いて喜多さんの攻撃を受け流すようにサッとトーンを落とし、超絶技巧的な多層分散フレージングソロにてガラッと空間の雰囲気を変え、しっとりとした優しさを全面に出したテーマ変奏にて演奏の方向性を導き出す。機を見て軍配を佐藤さんに上げるかのように林さんが、リリカルな、溜息の出るような美しいソロにて佐藤さんの提示した方向性を引継ぐ、Steinway & Sons の表現可能性をフルに引き出したかのような極上のソロ、頂上を極めたかのように林さん自らが一転してダイナミックかつ重厚なソロに展開し、一気呵成に全てを昇華するエンディングへ、最後締める佐藤さんの勝利の踏み込みが力強く、その揺れがすっかり演奏に惹き込まれた観客の目を覚まさせるように響き、慌てるように観客の熱狂的拍手と歓声が爆発する、高貴かつ激烈なるピアソラへのオマージュとはまさにこの曲と演奏に対するもの、素晴らしい限り。

観客の拍手と歓声が渦巻く中、再び鬼怒さんの英語 MC、前奏が佐藤さんの「Seven Steps to "Post Tango"」であることを告げ、それに呼応するような観客の歓声と拍手に感謝を述べつつ次曲のタイトルコール。

6曲目は「Nullset」、演奏ヴォリュームこそ低く、メインテーマは可愛い装いを有しているが、Salle Gaveau にかかると一聴して分かる捻り効き捲くり、アバンギャルド全開の演奏、本日は RIO 2007 であることを意識したと思われる装飾音時の鬼怒さんのワウの掛かり方が深めに感じられますし、フレージングそのものもとても刺激的です。そんな鬼怒さんが、クリアトーンにて溜息の出そうな美しいソロを取り、喜多さんがこれまた美しいトーンとフレージングで鬼怒さんに絡んでくる。静謐に、それでいて内情激しく展開する丁々発止の連続、シンクロナイズドスイミングの如き水面上の美しき舞いを、水面下にて激しい激烈なる連続運動によって支えていることを思い起こさせて下さいます。それも有ってか、メンバーの皆さんからも、他のメンバーの方の仕掛けや展開を伺いつつ演奏中思わず”よくやるなぁ”的笑みがこぼれてしまう様にも、その凄絶さが内包されている気がします。聴いているこちら側もワクワクしつつ、思わず笑みを浮かべてしまう素晴らしきこの演奏に心より敬服申し上げます。他の観客の皆さんもそう感じているようで、溜息とも苦笑とも取れるような微かな笑い声や感嘆の声を漏らす方が其処彼処に居られました。

鬼怒さんが三度マイクを握り、次の曲が最後の演奏となることを告げつつタイトルコール。

7曲目最後を飾るのは、この位置が定位置となりつつある「Crater」、King Crimson とタンゴの融合、宇宙とタンゴの融合を思わせる鬼怒さんのこの大曲、しっかり全員のソロ回しも取り入れて、至極、究極の約12分間の演奏、特に鬼怒さんのソロから、林さんのソロ、喜多さんのソロと繋ぐ辺りでは、鳥肌どころか息をするのも忘れ、人類が築いてきた音楽的英知の更に遥か高みにて奏でられる至高の音楽にただただ魅了されている自分がいました。見事な演奏にてライヴを纏め上げます。

勿論、凄まじいばかりの拍手喝采の渦が巻き起こり、続いてアンコール要請の拍手が起こります。しかしどうやら主催者側がアンコールを許さないようで、楽屋からメンバー全員が出てきて凄まじい拍手喝采をカーテンコールにて受け Salle Gaveau の演奏パートを締め括ります。


と言う訳で、RIO 2007 France の幕開けとしてはこれ以上ない形によって、Salle Gaveau のレコメン系ワールド・デビューは実現しました、大成功です!!


この素晴らしいライヴに立ち会うことが出来て本当に良かったです、限りない感謝を全ての関係者に深く捧げたいと思います。


ちなみにこの後、プレスカンファレンスが開かれまして、インタビュー形式でプレス関係者からの質問に鬼怒さん始め Salle Gaveau の皆さん(喜多さんの出席はなし)が答えていらっしゃいました。日本語でさえ答え難そうな厄介な質問にも真摯に丁寧に答えていらっしゃった鬼怒さん、普通ロックミュージシャンはそんなまともで正直な受け答えしません!



続いては、この日のトリとなる ZAO の演奏です。予定では Chant 担当の Cynthia SAINT-VILLE を含めた5人編成の筈だったんですが、何故か Cynthia SAINT-VILLE は欠席で、Faton CAHEN(pf), Yochk'o SEFFER(sax), Gerard PREVOST(b), Francois CAUSSE(dr) の4人編成によるライヴです。それでもいつも通りの暗黒色の強いスリリングな演奏を期待したのですが、どうも聴いていて音像のキレと言うかエッジ感が足りないように感じます。何となく焦点がぼやけて、ズレてしまっているかのような。後で聞いて成るほどと思ったのですが、どうやら彼らは、当日、開演直前ギリギリまでかかって、パリから車で来たようで(やはり、オルリー空港のストが影響してか)、老体に鞭打つ余りに余りな状況から、完全に疲れきっての演奏であったようです。それで、あの歳で、あれだけの演奏できること自体脅威でしかないのですが、流石に万全の状態時の演奏には至らないといったところでしょうか、「通りゃんせ」もバックトラック流しながらじゃなくて、きちんと生の chant 入れて欲しかった気がしますしね。

そんなこんなで8曲ほど演奏し、いよいよ最後が見えた9曲目、Faton のコールで何と喜多直毅さんがステージに呼込まれます!なるほど、それで先ほどのプレスカンファレンスには欠席されたのですねと深く納得!しかし、一昨年の ZAO の Japan Tour に壷井彰久さんが参加され、続いて今回喜多直毅さんの参加、この御二人は言わば、現在の日本の、というか東京の先鋭的なミュージックシーンを、トップを切ってシーンの牽引車的にそれぞれの表現方向性で活動をされていらっしゃるヴァイオリニスト御二人、凄い美味しいところだけツマミ食いしているようで、ちょっぴり Faton や Yochk'o に「世の中そんな甘くないぞ」と言いたくなるほどに嬉しい瞬間でした。いや本当にこの調子だと「困った時は日本人のヴァイオリニスト」的な誤解が進まないことのみ懸念します!それ程に、この御二人はヤバイ!そしてそれぞれにシーン最高のヴァイオリニストなのですから。

と言う訳で、喜多さんの参加により見違えるように素晴らしくなった ZAO の演奏、とてもスリリングで刺激的!Faton に促がされ「えっ、オレがソロ取るの?」的表情をみせた喜多さんの”喜多ワールド”全開の超絶技巧ヴァイオリンソロが爆発し、会場は一気に興奮の坩堝へ!本日の演奏曲中最長の約14分の素晴らしい演奏となり、大団円。終わりよければ全て良し的感がそこはかとなく漂う RIO 2007 France の初日でした。まさにこの日は Salle Gaveau の、喜多直毅さんの独壇場と言ったところ、世界はこんな”喜多直毅”の登場を待ちわびていたのです!!



n.p. Salle Gaveau「Official Live Bootleg DVD 2007」