09/02(木) GYRO @入谷なってるハウス

09/02(木) GYRO @入谷なってるハウスに行って来ました。セットは以下です、

1st Set:
1. 即興1

約39分

2nd Set:
2. 即興2
3. Far East (スズキイチロウ作曲)

約54分

高岡大祐(tuba), スズキイチロウ(g), 沼直也(dr) による即興演奏トリオ、GYRO、個人的には2度目の GYRO 体験です。渋さ知らズで、低音部をしっかり支えつつ、tuba という楽器の表現可能性を常に押し広げ続け、無尽蔵とも思える恐ろしいまでの体力を元に、100m の短距離走的瞬発力で、42.195km を走り続けるかのようなシーン最高の tuba 奏者、高岡さんをリーダーとしつつ、サウスポーの Pat Metheny とも言えそうな深くリリカルなトーンを用い、かつ GYRO では、時折 Mike Stern も真っ青なハードフレーズにも展開する、深い理論に裏付けられた先鋭的かつメロディ重視のパッセージを生み出し続け、同時に即興演奏における瞬間的なコンポーザーとしても非常に素晴らしい才能を有する稀有なギタリスト、イチロウさん、そして、phat 解散が非常に残念ながら、phat 時代から愛用している小口径のバスとシンプルなセットで、無限のファンキーワールドを叩き渡る、”黒い”ドラマー、沼さんの3人による音の探求の旅、GYRO の演奏はやはり素晴らしいですね。ミュージシャン側での大きなリスク、キメ無しの即興演奏という足枷を嵌めながら、聴く者には全くその事実を感じさせないノリの良いグルーヴ重視の楽曲に結果的に仕上がっていると言う恐ろしい事実。そう言う意味では、聴く立場から見ると、完全即興演奏トリオと言うよりは、本来の意味でのジャムバンドとして、オーガニックグルーヴを生み出し続けているバンドと言ったイメージですね。1曲目は、静かにアンビエントに始まったかと思うのも束の間、沼さんの”黒い”ファンキーでタイトなドラミングとナチュラルグルーヴマスター、高岡さんの tuba によるベースランニングが生み出すファンキーなリズム空間が構築され、その上でよく歌うカッティングとメロディアスなパッセージで、縦横無尽に美しいイチロウさんのギターが舞い続ける。一瞬足りとも飽きさせることなく、音が瞬間の中で、自然にグルーヴィに紡がれていくこのハイテンションなハイパーサウンドは本当に素晴らし過ぎです。しかも、しっかりと間奏部には、イチロウさんの泣きのバラードフレーズによる哀愁タップリのパートも盛り込まれていて、高岡さんの tuba によるグリッサンドチョーキング的な煽りと沼さんの歌心を的確に捉えたリズムの煽りが効果的に働き、リリカルに美しく展開します。後半は、イチロウさんのファンキーカッティングの中、ハーモニクスを巧みに用いて、デジリドゥ的な響き見せる高岡さんの不思議なサウンドとハイハッティストとでも呼びたい沼さんの見事なハイハット中心のリズム構築によるサイケな音像も素晴らしかったです。そんな形で、あっと言う間に、40分弱の即興演奏が終了します。ただひたすらに凄いです、この人達。2部は、大らかで温かみがあり、優しく心に染み入るような高岡さんの tuba ソロで幕を開け、線が細めの繊細なむせび泣くようなトーンでイチロウさんが合わせてきます。二人の哀愁漂うデュオの絡みの半ばで、静かなシンバルワークとスネアのフレームショットで沼さんが合わせてきて、それを契機とするように、イチロウさんがリリカルなメロディ演奏、高岡さんが印象的なベースフレージングに別れて行きます。続いて、感極まったかのように、イチロウさんがフィードバックと効果的かつコントロールされたハウリングを巧みに用い深い情感がその深みのあまり狂気に変わっていくかのようなフリーキーな展開を見せ、それを、どんどんハイテンション化させるように、高岡さんがベースランニングで、沼さんがハネたシャッフル系のリズムで煽り、イチロウさんのフレーズがどんどんワウを効かせたファニーなフレーズに変わっていき、一旦演奏をフェイドアウトさせ、その僚間を活かして、高岡さんの大巨人が近づいてくる足音のようなベース音のみで進行させて期待感を煽り、十分惹き付けたところで、イチロウさんと沼さんが合わせてきて、またもやハイテンションな展開へ。40分を過ぎる頃、イチロウさんの「Far East」のテーマ変奏が時折顔を見せるように現われ出し、そのままイチロウさんのペンによる名曲「Far East」に移っていきます。この名曲のオリエンタルなムード漂うテーマが、この三人の素晴らしい音の会話の中で、見事に昇華され、毎回展開が違いながら常に美しい構築美を有した即興演奏にまとめ上げられ、素晴らしい形で演奏に幕を引いてくださいました。GYRO、本当に刺激的で素晴らしい音楽を常に生み出し、現在のシーンの中で、どのバンドとも違っていながら、彼らが捉えている”音楽”の楽しさ、激しさ、美しさを見事なまでに瞬間の中で昇華させ、創造し続けていらっしゃいますね。興味と機会のある方は、3人のサイトのスケジュールをチェックして、是非ともこの素晴らしい”音楽”の生み出される瞬間に立ち会ってみて下さいませ。


n.p. GYRO「未発表ライヴ CD-R 」
(高岡さんのサイトで「低音環境」を通販購入すると貰えます!)