08/28(土) 喜多・黒田・ハーディ@新橋サムデイ

eiji002004-08-28

08/28(土) 喜多・黒田・ハーディ@新橋サムデイ に行ってきました。セットは以下、

1st Set:
1. Everybody loves everybody (約11分)
2. クレンジングクリーム(中島みゆき作曲、約11分)
3. Bat Dance (喜多・ハーディ Duo、約10分)
4. 機械の身体(喜多作曲、前回タイトル無しだった曲、約11分)

約50分

2nd Set:
5. Once Upon A Summertime(「リラのワルツ」 By M.Legrand、喜多・黒田 Duo、約7分)
6. ナオキチ・カリシラマ(喜多作曲、喜多・ハーディ Duo、約7分)
7. 即興(黒田・ハーディ Duo、約13分)
8. Variation 34 Molto adagio( By George Rochberg、約12分)
9. 板橋区 (喜多作曲、約10分)

約58分


今夜も素晴らしい、夢のような美しい音楽に魅了されました。喜多直毅(vln)黒田京子(pf)クリストファ・ハーディ(perc)のトリオ、喜多さんが、ホスト・ミュージシャンとして、デュオでいつも素晴らしい演奏を織成している黒田さん、アラブ音楽系のユニットで知り合ったハーディさんを招いた形となるこのトリオ、黒田さんとハーディさんが初共演となりますので、勿論このトリオ自体が初組み合わせとなります。まず冒頭を飾るのは、前回の喜多・黒田デュオ@大泉学園 in F と同様に「Everybody loves everybody」で幕を開けますが、もう、文句無しの素晴らしい演奏、本日はハーディさんのパーカッションも加わり、リリシズムとパッショネイトはそのままに、更に音像にふくらみを持たせた形、とても良い感じです。2曲目は、前回に引き続き中島みゆきさんの「クレンジングクリーム」、今回の喜多さんの演奏は、テーマ部は勿論前回に引き続いて素晴らしかったですし、それに加えて即興パートにも喜多さんが本来意図されてたであろう、”情念”というか、プリミティヴな原始感情的深い”想い”が込められてたように感じました。それを受けた黒田さんの即興演奏が、恐ろしい程良かったです!狂おしいまでの”情念”が込められたかのようなリリシズムをダイナミックに表現されていらっしゃいまして、Martha Argerich を彷彿とさせるような鬼気迫る即興演奏でした。続いては、アラブ系の曲「Bat Dance」を喜多・ハーディ Duo で演奏します。この際のハーディさんが用いていたハンドドラム、通常のハンドドラムより一回り大きい感じでした。叩き方は、「水の音」「火の音」「砂の音」「風の音」等を意識されているようで、シャーマン風スピリチュアルなハンドドラムで、ハーディさんの表現力の深さをこの辺りから強く実感しました。アラブ系を主体とした素晴らしいパーカッショニストですね。1部最後は、前回初演の喜多さんの新曲が「機械の身体」というタイトルを携えて再び登場です。喜多さんの書くこの美しい曲を礎としながら、3人の演奏も素晴らしく溶け合い、1部でここまで完成させてしまって、2部はどうなるのかと余計な心配をしてしまう程に素晴らしい演奏に仕上がっていました。2部は、喜多・黒田 Duo にて「リラのワルツ」を演奏し、幕を開けます。「ビル・エヴァンスも取り上げた」と何度か連呼されてた喜多さん、恐らく黒田さんの演奏がビル・エヴァンス的リリシズムを彷彿とさせることをもって、選んだきたことを伺わせます。2人の演奏は、勿論、美しさの極致を自でいくような素晴らしさ。本当にこのお二人のデュオは、耽美主義的デュオと言った趣を強く感じさせますね。2部2曲目は、個人的には久々の「ナオキチ・カリシラマ」、トルコ風 9/8 拍子、カリシラマを用いた喜多さんのオリジナルですが、まだ & More が付いていない頃の Play Post Tango & More で演奏されていたのですが、最近は取上げる機会が減っていた(聴きに行っていないですが、恐らくアラブ系ユニットで演奏されていたのでしょう)この曲を、ハーディさんのダラブッカとのデュオで合わせます。ハーディさんのダラブッカ演奏と喜多さんの表現力豊かなバイオリンによるカリシラマ、一瞬、サムデイがトルコになったかのような錯覚を覚えましたね、素晴らしかったです。3曲目は黒田さんとハーディさんのデュオによる即興演奏。黒田さんが先行してフレーズを奏で、寄り添うようにパーカッションで色付けするハーディさん、お二人の演奏は、本日が初めてとはとても信じられないような息の合い方で、途中、黒田さんは「Good Morning, Chris!」「Birds are singing ... 」等語りかけ、お二人でピクニックに出かけているかのような、情景描写豊かで楽しげな即興演奏に仕上がっていました。客席で聴いてらした喜多さんも「素晴らしく楽しげな即興演奏ですね!これ聴けただけでも今日来た甲斐がありました。お二人、このまま結婚されたら如何ですか?」と思わず洩らしていらっしゃったほどに、素晴らしい即興演奏でした。4曲目は、驚きの選曲、現代音楽家 George Rochberg が、パガニーニの24のカプリースにインスパイアされて作曲した「65の変奏曲」から「Variation 34 Molto adagio」を取上げます。選曲自体にも勿論驚かされますが、それ以上に通常はバイオリンソロで取上げられるこの曲を、このトリオで演奏すると言う発想自体にもまた驚きを隠せません。やはり天才の考えることは、常人の理解の壁をあっさりと越えたところでなされているものだと痛感しました。演奏自体も、暗いテーマが深く掘り下げられ、素晴らしい演奏となっていたように思います。そして最後を飾るのは勿論、喜多さんの珠玉のオリジナル作品の中でもひときわ美しく輝く、名曲中の名曲「板橋区」、この3人の美しく溶け合う演奏にて、更にその美しさが深みを増したかのようで、本日の夢のような美しい音楽の閉めとして、これ以上ない程に相応しい締め括り方でした。喜多さんの最近の活動の充実振りは凄まじいものが有りますし、黒田さんの底知れない演奏力、表現力にはただただ感服します、そして、クリストファ・ハーディさん、また一人素晴らしい演奏家に出会えた喜びは喩え様もありません。また、この3人での再演、強く希望いたします!


タイミング良く、AIRPLANE LABEL から新譜のお知らせが有りましたので転載します。

##### AIRPLANE LABEL メールマガジン8月号 より転載 #####

■喜多直毅

□『HYPERTANGO II』 (APX1002)

□発売日 10月初旬予定

□2520円(税込価格)
 2400円(本体価格)

1stソロアルバム「ハイパータンゴ」で伝統的なタンゴの枠を超えた鮮烈なオリジナリティを発揮し、新世代タンゴ・ヴァイオリニストとしての評価を確立した喜多直毅が、さらなる一歩を踏み出したソロ第2弾。前作に引き続いて古典タンゴやピアソラの名曲に独自のアレンジで新たな生命を吹き込む一方、ピアソラのクラシック作品「タンゴ・エチュード」をタンゴ奏法を駆使したかつてないアプローチで演奏。さらに同じくピアソラ作の「オブリビオン」ではピアニスト黒田京子による即興演奏とのコラボレーションを聴かせる。また小松亮太門下の若手バンドネオン奏者、早川純とのデュオで現代タンゴの傑作「ALLER ET RETOUR II」(モサリーニ作曲)を収録したことも注目される。

##### 以上、AIRPLANE LABEL メールマガジン8月号 より転載 #####


n.p. 喜多直毅「Hypertango」