04/19(月) Play Post Tango And More@大泉学園 inF

04/19(月) Play Post Tango And More@大泉学園 inF に行ってきました、セットは以下です。

  • 1st Set:

1. アローイ(鬼怒)
2. アール・デコ(鬼怒)
3. 板橋区(喜多)
4. La Danza De La Pasion(鳥越)
5. クレーター(鬼怒)

約55分

  • 2nd Set:

6. パレード(鬼怒)
7. 1/29 Tango(鬼怒)
8. 橋田壽賀子(喜多)
9. タイトル無(鬼怒:Warehouse と COTU COTU で合わせるために書いてお蔵入りになった曲)
10. Waltz For Debby (Standard: By Bill Evans)

  • Encore:

11. The Saga of Harrison Crabfeathers (Standard:By Steve Kuhn)

約85分


inF 大泉移転6周年の本日に相応しく、今、ニューカマーとして最も注目を集める Play Post Tango And More のライブ、流石に目聡いお客さんが多く、立ち見でびっしり埋め尽くされた店内が、移転6周年を盛大に祝っているように思えました。改めて言う必要も無いことでしょうが、このバンド、凄いです!リーダーである鬼怒さんと若手3人が良い形で影響し合って素晴らしいケミストリを生み出しています。更に、オリジナル曲も素晴らしいので、出来るだけ早い音源化を切に希望したいところですね!来年度のまぼろしの世界からのリリース辺りを大いに期待したいところです。メンバーは、喜多直毅(vn), 佐藤芳明(acc), 鳥越啓介(b), 鬼怒無月(g) の4人です。鬼怒さんはいつものアコギに加えて、Buccus のレスポールモデル、しっかり持ってきていらっしゃいました。このギターによる繊細なニュアンスとダイナミクス表現が、このバンドの生み出す音楽の中でどのように昇華されるか、本当に楽しみでなりません。まず、1曲目は「アローイ」、冒頭のテーマ合わせから、鬼怒さんと喜多さんの絡みを残るお二人がパーカッシヴにサポートし、4つの個性が溶け合って1つのバンドサウンドを生み出す様子が分かり易く提示されており、ライブの導入曲に相応しい良曲ですね。続いて、「アール・デコ」、MC にて「アール・デコってどんな意味?」と皆さん(鬼怒さんも混じって!)で首を傾げ合ってましたが、個人的には間奏部の4人が個々でバラバラなテーマを弾き出すところが、アール・デコ様式で用いられる幾何学模様を想起させるところからタイトルにしたと勝手に思い込んでました。曲相を絶妙に表している気がするんですけどね。3曲目は既に名曲の感がある「板橋区」、鬼怒さんがレスポールに持ち替え、繊細で抽象的なアルペジオによるフレーズを鏤めるようにテーマを奏で、佐藤さんがその美しさを引立たせるような物悲しいフレーズを絡めてきて、装飾音を絡めながら曲相を整えていた喜多さんが、郷愁を誘うようにたっぷり引っ張ったメインメロを静かに、柔らかく乗せてきます。もう、この美しさは、例えようも無い程ロマンチシズム溢れる素晴らしい演奏で、「赤」の激しく燃えるような情熱を冷めた冷静な「青」で覆い尽くすような対比が本日も見て取れましたが、4人の呼吸が合ってきたためか、更に表現の深みを増したように感じました。続く曲は鳥越さんの曲「La Danza De La Pasion」、冒頭の鳥越さんのソロからいかりや長助風フラメンコ魂爆発ですが、今日の間奏部の鬼怒さんのスパニッシュ風ソロは、いつもにも増して鬼気迫る迫力を感じました。1部最後は「クレーター」、勿論、鬼怒さんはレスポールに持ち替えます。鬼怒さんのテンポ指示を受け全員一緒に曲に入り、タンゴの持つ熱情とプログレの持つミステリアスな雰囲気を併せ持ったこの曲の音像を構築していきます。間奏部の鬼怒さんのギターのワウを掛けっ放しにしてのパッセージが、また曲相を象徴的に表していたように思います。と、曲、演奏共に素晴らしかったのは勿論、いつも通り MC もナンセンスものからシニカルなものまで爆笑連続でした。いつもにも増して、喜多さんのネタに冴えが見られましたね。

2部は「パレード」で幕を開けます、この曲、個人的に非常に気に入ってまして、鳥越さんのランニングベース、佐藤さんの伴奏、喜多さんのエキセントリックな装飾音に彩られた音によるストリートを、鬼怒さんがレスポールを用いてのメインメロで行進をするような曲相が堪らないのですね。この曲を聴くと、Prince のその名も「Parade」の冒頭を飾る「Christopher Tracy's Parade」を思い起こします、Prince のそれが、Funk Music の新たな境地を切り開いたように、Play Post Tango And More の「パレード」は、Tango の新たな境地を切り開いているように思いますね。続いては「1/29 Tango」、鬼怒さんも MC で仰ってましたが、Progressive Rock と Tango を融合させたような画期的な曲で、Progressive Rock のモチーフがここまで Tango のエッセンスと融合して昇華された形を提示されると、その着想と結果として表されるコンポーザーとしての鬼怒さんの偉大さを改めて深く認識させられます。この偉大なる音楽家鬼怒無月さんと時代と場所を一瞬でも共有できた幸せを感謝せずにはいられません。この曲の細部のニュアンスの表現にも、やはりレスポールが大きく貢献している気がします。そして、遂にこのバンドでの初演となる「橋田壽賀子」、この曲は先日、喜多・黒田デュオで聴いて非常に印象深かった喜多さんの新曲で、個人的にはメインメロのロマンチシズム溢れるクサさが、少しも臆すること無く堂々と、非常に説得力を持った形で圧倒的に美しく演奏されている辺りが、まさに橋田壽賀子さんが書かれるホンを彷彿とさせるところからタイトルに持ってきたのかなと思っています。ひたすら美しい、素晴らしい楽曲で、この日も2部の2曲目に演奏される予定が、1曲目終了後の余りにナンセンスな喜多さんの MC の後に演奏したくないとの鬼怒さんの判断で、急遽「1/29 Tango」と演奏順が逆になった程美しい曲です。余りにくだらな過ぎる(勿論、面白いのですが(^^);)MC とこの曲を作曲した人が同一人物だと言う事実には、本当に驚きを隠せません。そして続いては、鬼怒さんが以前、Warehouse と坂本弘道さん率いる COTU COTU で共演する際に演奏しようと作曲したが、結果的にお蔵入りになってしまった曲を Play Post Tango And More でこの日演奏しようと、改めて書き起こしたまだタイトルの無い曲です。ラテンの一般的な楽曲では、恐らく意識して消されていであろう暗黒チェンバー色が見て取れました。そんなヨーロッパ文化の暗部にスポットを当てたモチーフが、Tango のエッセンスと絡めて美しく構築されている楽曲は、やはりこのバンドの素晴らしい演奏を受けて妖しく、美しく光を放っていたように感じました。そして本編最後を飾ったのは Bill Evans「Waltz For Debby」、前回の行徳ニュースタートセンターでの前振り(「Blue In Green」を取り上げ、Miles と Bill の著作問題を MC ネタにしていた)辺りから期待していたところ、やって下さいました! Scott Lafaro のそれを意識された鳥越さんの優しく包み込むようなフレージング、鬼怒さんの美しく零れてしまいそうなメインメロに打ちのめされましたね!美し過ぎる!アンコールにては、これまた美しい Steve Kuhn「The Saga of Harrison Crabfeathers」、いつもにも増してアンコールの拍手を引っ張らずに空かさず「やります、これ弾きたいので。」と仰った鬼怒さんの想いがダイレクトに心に突き刺さるほどの美しきフレーズ、最高でした!本当にこのバンドのライブは、素晴らし過ぎる程に素晴らしい楽曲と演奏となってますので、機会と興味のある方は、是非ともライブに足を運んで下さいませ。


n.p. Kita Naoki「Hypertango」