10/23(火) 黒田・小森デュオ@大塚 Greco

10/23(火) 黒田・小森デュオ@大塚 Greco に行って来ました。セットは以下、

1st Set:
01. cl solo 〜 Chorando Baixinho ( By Abel Ferreira、小森 cl、約5分)
02. Andre de Sapato Novo - 新品の靴のアンドレ - ( By Andre Victor Correia、小森 cl、約3分)
03. 如月の二人 / お散歩 - Go For A Walk - (小森慶子作曲 / 黒田京子作曲、小森 ss、約12分)
04. Green Cradle (黒田京子作曲、小森 ss、約14分)
05. Zephyrus (黒田京子作曲、小森 ss、約13分)

約56分

2nd Set:
06. pf solo 〜 "Calendario Do Som - 音のカレンダー -" 8/14 〜 9/21 ( By Hermeto Pascoal、小森 cl->pan->cl、約18分)
07. 3・4・5 (小森慶子作曲、小森 ss、約6分)
08. Pastoral (小森慶子作曲、小森 cl、約8分)
09. 子どものアルバム[24の易しい小品] 作品39 第20番 バーバ・ヤーガ ( By Peter Ilyich Tchaikovsky、小森 ss、約8分)

約51分

黒田・小森デュオ Member:
黒田京子(pf)
小森慶子(ss,cl,pandeiro)



待ってました黒田・小森デュオ!途中に西嶋徹さんを加えたトリオとしてのライヴはあったものの、本デュオとしての前回はやはりここ大塚 GRECO にて昨年末の 12/28(木)に行われて以来ですので、ほぼ10ヶ月ぶり!待ちに待った、夢見た音楽の形が久しぶりに実現した夜、そんな心地さえする黒田京子さんと小森慶子さんのデュオライヴ、御二方のそれぞれのオリジナルとトンでもなくヴァラエティに富んだ他の人の曲を、丁寧に、繊細に、そして力強く今夜も演奏して下さいました。

やはり音楽は素晴らしい、美しさと喜びに満ち溢れていると実感させていただきました。素晴らしい曲と演奏で、そんな想いを抱かせて下さった御二方、黒田京子さん、小森慶子さんに限りない感謝を捧げます、ありがとうございました。

会場にいらして下さったお客さんも皆さん本当に音楽好きの素晴らしい方々ばかり、開演前にご挨拶したり、お顔を拝見するだけでも幸せな気分に浸れてしまう、空間を共有し、共に素晴らしい音楽を楽しむことが出来て幸せでした。会場となった大塚 GRECO もこの程10周年を迎える。miyoshiさんがいつものように明るく、お美しく、お元気そうで何より、開演前に10周年アンケートを書かせていただきました。御二人が目指すのは、神々しいまでに美しく険しい遥かなる頂、そしてその先の空であり宇宙、その途中となるであろう本日の演奏がそう感じさせて下さいました。この先の目標が高く険しいですので、当然課題もあるかとは思いますが、この御二人なら間違いなく乗り越え、至高のその上に到達することが出来るはずです。このデュオはもっともっと、更に素晴らしい音楽をこの先に生み出して下さることと思います。

まず冒頭は小森さんの MC から「ようこそおいで下さいました。私が話していますのは、先発でやらせていただくからです。」とのことで、小森さんのクラリネット・ソロから導入、滋味溢れる豊かな表現、もの悲しく、そして優しい、黒田さんのリリカルなピアノが被さってきて、ショーロの名曲「Chorando Baixinho」へ、この曲の作曲者であり、ブラジルが誇るクラリネット奏者、Abel Ferreira を彷彿とさせる豊かな情感表現、小森さん独自のサウダーヂ表現を黒田さんのリリカルで巧みなリズムニュアンスを伴ったサポートで見事に具現化させます。

「Chorando Baixinho、Abel Ferreira というブラジルのクラリネットの巨匠が書いたショーロの名曲を演奏させていただきました。ショーロ特集になってしまってます、すいません、南米化が訪れておりまして(笑)」との MC を挟み「Andre de Sapato Novo」へ、こちらは前回の西嶋さんを加えたトリオでも演奏されてましたね、デュオでの演奏もとても味のある御二人ならではの表現に高められていた印象です。「神をも畏れぬ大暴言をさせていただくならば、私達にはブラジルの血が入っている訳でもないですが、ブラジル音楽を解体し、その上で私達の音楽に出来たらと思ってリスペクトをしながらやっています。お付き合いいただけると嬉しいです。」との小森さんの言葉で締め。

続いては、蜂谷さんとのデュオ@青山月光茶房で初演された小森さんの書き下ろし新曲が「如月の二人」に正式タイトルが決まったようでして、この曲と黒田さんのオリジナル曲「Go For A Walk - お散歩 -」をカップリングしての演奏とのこと。冒頭「如月の二人」の神々しいまでの美しきテーマが小森さんのソプラノ・サックスによって朗々と歌い上げられ、黒田さんの荘重なるフレージングがしっかりと支える中、見事に展開してゆく、その流れを受けての本日の御二人の「お散歩」は、軽快でありつつも高貴さを纏い、”女神のお散歩”を思わせる描き方になっていた印象です。最後に再び「如月の二人」のテーマ演奏にて美しく幕。

4曲目は何と「Green Cradle」、前回の黒田京子トリオのライヴで翠川敬基さんに捧げる形で書かれたバラード曲、元々は黒田さんがジャズを習い始めて3年目にお書きになった曲で、それを全体的に書き直したもの。2ヶ月前の黒田京子トリオで初演され、本演奏が2度目となるはず、黒田さんのこのデュオに対する信頼と想いがこのこと一つにも現れている気がします。印象派を思わせるメロディをこぼれ出すような美しきタッチで黒田さんが先行して描き出し、小森さんのソプラノがやはりこれまた美しく被さって来る。やはりこの御二人の奏でるバラードは絶品であることを、深く、そして改めて強く実感する、最後にコーダのように纏められた情感溢れるテーマ演奏の美しさには、ただただ平伏すのみ、お見事!!

1st Set 最後は、これまた前回の黒田京子トリオのライヴで先頃お亡くなりになった富樫雅彦さんに捧げる形で黒田さんがリメイクし、初演された曲、これも恐らく二度目の演奏、黒田さんの想いに聴かせていただく前から既に涙目。黒田さんが富樫さんの演奏の思い出を語って下さり、更に涙。そして最後に「一回でいいから富樫さんと演奏したかったのですが、適いませんでした。そして、お見舞いにも伺いたいと思っていながら、それも適わず、凄く悔いが残っています」とのお言葉に、また涙。「そんな曲ですが、コモちゃんと演奏したくて持ってきました。さあ二人で何処まで飛べるかな?」その後に奏でられた演奏の美しさ、気高さに圧倒されました。このデュオの素晴らしさが凝縮されたようなこの「Zephyrus」の演奏、見事に瑠璃色の蝶が、山間の渓谷を狭いながら深い青空をバックに舞う様に飛ぶ姿がハッキリと浮かび上がってきました。


休憩を挟み 2nd Set 冒頭は、黒田さんの「1st Set はコモちゃんのソロで始めたので、2nd Set は私から」の言葉を伴ってピアノソロから、アブストラクトにピアノを奏でつつ曲の紹介「私とコモちゃんと西嶋くんで演奏した Hermeto Pascoal の曲で、1年間毎日書かれた曲の3人の誕生日を演奏したん.で.す.が、私のはとても難しいので、コモちゃんと西嶋くんの」に「今日は居ないけど」の小森さんの合の手、続けて黒田さん「今日は西嶋くんは居ませんが、2人の誕生日の曲をモチーフにしてやってみましょう」言葉を区切り、重みを加えたかのように重厚に美しく滑り出す黒田さんのパッセージ、一頻り黒田さんのソロピアノが舞踊り、ふっと余韻が浮かぶ空間にそっと寄り添うように手を差し伸べるかの如く小森さんの愁いを帯びたクラリネットが滑り込む、御二人のデュオ演奏はまるで氷上を舞うフィギアスケートペアのよう、早い回転系の連続技を思わせる演奏から、しっとりと緩やかに踊る様子を思わせる展開になり、そしてクラリネットで哀愁を詠う小森さん、慰めるようにリリカルなタッチのピアノで場面を支える黒田さん、更に場面を変え、黒田さんが力強いタッチで情熱的に弾き出すと、小森さんはパンデイロに持ち替え黒田さんの情熱のパッセージを支え、更に御二人の掛け合いも見せつつより情熱的な展開へ、踵を返すように小森さんがクラリネットに再び持ち替えテーマのリフレインへ、最後は後ろ髪に惹かれそうな余韻を残しつつ演奏を纏め上げる。

続いては久しぶりに小森さんの「3・4・5」、この曲はたしか小森さんが、斎藤徹さん、立花泰彦さんとトリオを組んでらした時にお書きになったオリジナル曲で、メンバーがそれぞれ 30代、40代、50代であることからこのタイトルになった曲、私はスズキイチロウさんと小森さんのデュオで聴かせていただいた記憶があります。冒頭、ソプラノサックスによる高らかなテーマ演奏で小森さんが飛び出し、すっと黒田さんが寄り添うようにパーカッシヴなフレーズを絡ませ、力強い怒涛の展開へ。御二人の逞しさ、本質的な力強さがより強調される様な演奏に、思わず見惚れてしまいそうになる御二人のカッコいい演奏でした。

ここで珍しく小森さんから告知の要請が、何と、12月に日暮の Bar PORTO で吉田隆一さんとのデュオが決定したようです!(12月15日の土曜日のようですね)これは楽しみですね。続いて、黒田さんから坂田明 mii での北海道ツアーの様子が語られ、さらにこの小森さんとのデュオは二人でしか出来ないものを今後もじっくりと続けていく、皆さんも長い目で見てこのデュオを是非とも応援して下さいねとの嬉しいお言葉がありました!

続いて小森さんの「Pastoral」、牧歌的という意味のこの小森さんのワルツ、テンポを遅めに、タップリの溢れんばかりの情感を込めつつ豊かに、優しく、そして限りなく美しく御二人の音が織り成し行く御二人だけにしか構築し得ない見事な音世界、この豊穣なる音楽と共にある喜びに、知らず知らずにじわっと涙が滲んで、心が温かく満たされていく素晴らしい演奏でした。

最後は難曲で、黒田京子トリオで演奏の際に太田さんと翠川さんが悲鳴を上げつつ演奏を出来るだけ避けたがるチャイコフスキーの子どものアルバム[24の易しい小品] 作品39 第20番「バーバ・ヤーガ」、この黒田さんのアレンジをこのデュオで聴くことが出来るとは、これは堪りません!「さて、小森さんと描くバーバ・ヤーガ、一体どんな魔女になりますかね」との黒田さんの言葉に続き演奏された行き成り冒頭の小森さんのソプラノサックスと黒田さんのピアノによるテーマ演奏の力強さに圧倒されましたね、この揺ぎ無い確信に満ちた御二人のフレージング、お見事です!丁寧に、そして繊細に、それでいながら思いっきり大胆に、力強く描かれたこの演奏、未曾有の美しき魔女が、カッコよく八面六臂に飛び交い、何故か正義の味方になっている様子が、演奏から見て取れました、最後までものの見事に描き切りました、素晴らしい限り!


この素晴らしきデュオの演奏に立ち会えたことに、限りない感謝を捧げます、ありがとうございました!!次回の演奏を首を長くして待ちたいと思います!!



n.p. 黒田京子トリオ「Do you like B ?」