01/21(日) Fazil Say インストアライヴ、SU / ULTIMATE SESSION

01/21(日) Fazil Say インストアライヴタワーレコード渋谷店 に行って来ました。セットは以下、

01. Summertime ( By George Gershwin、約5分)
02. Black Earth ( By Fazil Say、約5分)
03. ピアノ・ソナタ第17番ニ短調作品31-2『テンペスト』 第3楽章 ( By Ludwig van Beethoven、約5分)
04. ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調「戦争ソナタ」 Op.83 第3楽章 ( By Sergei Sergeevich Prokofiev、約4分)

Encore:
05. ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331 『トルコ行進曲』 第3楽章 ( By Wolfgang Amadeus Mozart: Arg By Fazil Say、約1分)

約22分


まさかと思いましたが、Fazil Say がミニアルバムのプロモーションで来日してインストアライヴを行って下さいました。前々日のテレビ「たけしの誰でもピカソ」への出演とライヴ告知(私は見ておりません)が効いたのか、開演30分前にも係わらず既に会場は超満員、これで6Fスペースは無理でしょう、せめてイベントフロアにしないと思っておりましたが、そのまま敢行。開演20分前には、旧譜を含む Fazil Say の全てのアルバム売り切れの声が後方で聞こえる、見込み甘過ぎですね、タワレコ渋谷店。結局、この日は約500人(どうやって入ったの、あのスペースに!)入ったそうで、事故が起きなかったのが何よりでした。

開演予定時間丁度に、お店側から Fazil Say のプロフィールやら簡単に紹介。その後に御本人会場設置ピアノ(YAMAHA)に向って左奥の方から登場らしい、いや、ホント全くその姿は見えません。近くの人の声と拍手からそれと想像するのみ、程なく緩やかに流麗なフレーズが流れ出す、おぉ「Gershwin」収録の「Summertime」ね、煌びやかに空間に光を投げかけるかのようなタッチとフレーズ後半のクリシェArt Tatum を思わせる。抑制された熱情を内包させるように、余り引っ張らずに纏め上げる。

続いて、行き成り内部奏法をしているような(全然演奏している姿が見えません)丸みを帯びたアタッキーな音、恐らく左手鍵盤で重いフレーズ弾き、右手フレーム内の弦を直接スラップしていたのではないでしょうか、そのアバンギャルドな序章を経て、憂いを帯びた美しいテーマに入る「Black Earth」、情熱的な間奏部を経て、狂おしいばかりの再テーマ演奏、今度は少しプルするような内部奏法を伴なわせつつ、最後は再び重いフレーズと内部スラップ風な音で纏め上げる。

3曲目は、割と正統的な「テンペスト」、と思って聴いていたら、途中からやはり Fazil Say ならではの解釈による激しい「テンペスト」になっていました。そして、最後はプロコフィエフの「戦争ソナタ」、行き成り激しいですね、これもかなり聴きモノでした。もっと聴きたい願いもむなしく、これにて本編終了、当然のアンコール要請を受けてのアンコール、当然この曲「トルコ行進曲 ジャズ」、1分ほどでさっと切上げる。

素晴らしかったのですが、会場に難があり、かつ折角の機会が20分ちょっとというのは余りも酷かなと。やはり、Fazil Say の演奏は、コンサート会場でゆったり楽しみたいと痛感したしました。


その後青山へ移動、


01/21(日) SU / ULTIMATE SESSION@青山月見ル君想フ に行って来ました。セットは以下、

SU:
01. Jyu-Go 〜 ( By SU )
02. 〜 Go 〜 ( By SU )
03. 〜 Roku ( By SU、約16分)
04. Kyu ( By SU、約6分)
05. Jyu-Ichi ( By SU、約5分)
06. Hachi ( By SU、約6分)
07. Yon ( By SU、約6分)
08. Jyu-San ( By SU、約8分)

約48分

SU Member:
林正樹(key)
西嶋徹(e-uplight)
千田貴志(g)
佐藤大輔(dr)


ULTIMATE SESSION:
01. 即興1 (約21分)
02. 即興2 (約27分)

約51分

ULTIMATE SESSION Member:
ナスノミツル(b)
福岡ユタカ(vo,effect)
Jimanica(dr)


先ずは、SU の演奏からスタート、徐に4人がステージに現れる。私は今までも何度か SU のライヴに足を運ぼうとしていましたが、なかなか都合が合わず、今回が初の SU ライヴ体験となります。どうやら、林正樹さんはノードレッドを使用する模様、そして西嶋さんは Electric-Uplight、西嶋さんが Electric-Uplight Bass 使用するの初めて見る気がします。佐藤さんは、バス、スネア、タム、ハイハットに2シンバルのかなりシンプルなドラムセット、千田さんは、サンバーストのフェンダーストラトキャスター、普段、シンガーソングライターとして活動されてるそうなので、恐らくそっち向けのものをそのまま使用しているのでしょう。

演奏をスタートすると、当初思っていたより音も大きめ、かなり Squarepusher している気がします、林さんのトーン&フレージングの為か、かなり明るめの Squarepusher ではありますが。ベクトル的に近いところで言うと、MUMU や eu でしょうか?向うが両方とも植村昌弘さんがドラマーですので、かなり佐藤大輔さんには厳しい気がします、でも、叩きっぷりは見た目かなりワイルド、チューニングも少しルーズにしているようです。中村達也さんを彷彿させますね、空くまでも見た感じですが。千田貴志さんは、普段歌をメインに活動されているそうですが、聴いていると、なかなか達者なミニマルギタープレーヤーでもありますね。

そして、何といっても林正樹さん、あの変拍子空間の中、更に遊びを加えるところは、やはり殆んどバケモノですね、左手のフレーズは、(恐らく)正確に譜面通り辿り作曲者の意図通りに千田さんのフレージングとポリリズミックにアンサンブルしつつ、右手でメロを乗せてくるところでは、ニュアンスを微妙に変化させたりしながら、ノードレッドで、一人ポリリズムして遊んでいたようです。その辺り、ある種仕掛けとも取れるのですが、他のメンバーは反応していなかった(西嶋さんは明らかに気づいていたようです)ようですので、シンプルに音楽を楽しみつつも、少し寂しさも同時に感じてしまっていました。西嶋さんはもう、ホントセンスの塊ですね、すばらしい演奏でポリリズミックなグルーヴを見事にまとめていらっしゃいました。本当に心から安心して音楽に全てを委ねることが出来るのは、そこに西嶋さんが演奏していて下さるからであることを再認識させていただきました。この西嶋・林の最強コンビは、7年前にこの SU で出会ったことから始まったとのことで、ここに西嶋・林コンビの、そして林正樹さんご自身の原点があるのだなと感慨深く音楽に身を浸らせていただきました。

殆んど曲間をおかない形でどんどん曲を繋ぎつつ 8曲50分弱にて演奏終了、4者が織り成すポップなポリリズムは、単純にとても楽しいですね、変拍子好きの為の幸せのクラブミュージックとして、とても良質な心地好い音楽に仕上がっていた気がします。


続いて ULTIMATE SESSION。てっきりトリだと思っていたのですが、2番手に早くも登場で、こちらとしては完全に不意を突かれました。ナスノさんがステージに立っていても「あ、二番目のバンドにもナスノさんがサポートで入っているのかな?」と思ってしまう自分はとても間抜けですね。まだ、SE が流れる中、何の前フリも無く行き成り福岡さんが演奏開始、神秘的な不思議ヴォイスを出しつつ、手元のカオスパッドで様々にエフェクトをかけ、楽しそうに気持ち良さそうに空間にオタケビを放ってゆく、聴いているこちらも、福岡さんの独特の世界に行き成り引き込まれてしまいます。十分に空間内が落ち着いた頃合を見計らって、Jimanica さんが、強めのエフェクトをたっぷりかけたタムを巧みに叩きつつ、福岡さんのカオスパッドに対抗するようにフィルイン、ナスノさんは後方アンプ横にてエフェクターのつまみをいじりながらアンビエントに音と音を繋いでゆく。頃合を見て、ベースを構えつつ巧みにフィルイン

私的には Jimanicaさんは初めて見させていただくのですが、譜面ではなく即興演奏の中での拍子の切替が余りにもスムーズであること、要するに溜めが一切無く、拍子のお尻に他の拍子の頭をぶつけるようにかつスムーズに音とリズムが流れてゆくこと、そしてシンバルワークの見事さは圧巻でした。手元を見ていると、優雅に緩やかに見えるのですが、音は粒立ちのよい綺麗なシンバル音が漣のように聴こえてくる、まさにドラム版スローハンドと言った感じ、堀越彰さんのシンバルワークに通じるところも感じさせる素晴らしいドラマーです、未チェックであったのがお恥ずかしい限り。

3人が織り成す音、というより世界そのものは、様々に色合いを変えつつも見事なまでにコントロールされている。明らかに、単なる音の放出ではなく、実際に出すエフェクトを含めた音のフィードバックを、先を予見するかのように瞬間に先んじて得て、それに合わせて結果構築美を備えた見事なまでの音像が描かれている印象。その為、構築された音像としてはカオティックなのに、その構成音の一つ一つは精緻な音色かつ微細な表現を有している見事な即興演奏、徐々にクレッシェンドさせていき、後半は、うわぁーこう来るかぁー!!サイケデリック色漂う Kingston Wall 風ハードロックな盛り上がりを作って20分ほどで切上げる。

おぉっと珍しくナスノさんの MC です。「ねぇねぇ、後ろの方、おしゃべり止めてちょっと聞いて、私たちはバンドじゃなくて、Ultimate Session という形でこのツワモノ3人?オジサン2人と若者1人が集まってセッションをしています」に続いてメンバー紹介、「私たちは事前に決め事とか一切ない形で、今日ばったり会って、ばったりやってますから、こう言う聴き方が正しいとか無いんで、自由に、ゆったり聴いて下さい、次ぎいきます」

2曲目、再び福岡さんが先手、今度はユーモアをタップリ含んだ日本語風(?)なヴォイスで祭囃子風に展開、Jimanica さんとナスノさんを巧みに呼込む。今回は序盤からかなりアップテンポ、行き成りぐいぐいと音の渦の中に引き込むような強烈なグルーヴを生み出す。突然フッとトーンを落とし、アンビエントかつアブストラクトな展開へ、一頻り空間内に暗黒調音像を広げ終わったと思った頃、ナスノさんのベースランニングが地の底から飛び出す。再びアップテンポな展開に変わり、福岡さんはラップ風なヴォイスで煽り、Jimanicaさんはバスドラを巧みに絡ませながら煽ってくる、空間がパッと開け、ナスノさんの印象的なベースリフにて、ギターカッティングのような音を奏で始める。二度渦巻く強烈なグルーヴにて、またまたサイケデリック色漂うハードロック的展開、熱い!!1曲目より長めに、25分ほどで演奏を切上げ、幕。

もう名人芸としか言えないような見事な、究極的な即興演奏に強烈に打ちのめされ、この後のバンドの演奏を聴かずに帰途に
着きました。


また機会を見つけて足を運びたいと思います。


n.p. Fazil Say「Black Earth」