09/19(日) スズキイチロウ・カルテット@入谷なってるハウス

09/19(日) スズキイチロウ・カルテット@入谷なってるハウス に行ってきました。まずはセットから、

1st Set:
1. Hobo Brazil (スズキイチロウ作曲、小森 ss、約17分)
2. Round in cape (スズキイチロウ作曲、小森 ss、約8分)
3. まだタイトル無:0619 (スズキイチロウ作曲、小森 cl、約9分)
4. Speak Like a Child ( By Herbie Hancock、小森 ss、約10分)

約50分

2nd Set:
5. The Road To You ( By Pat Metheny、イチロウ・ソロ ag、約5分)
6. 即興 (イチロウ・小森デュオ、イチロウ ag、小森 ss、約9分)
7. Boo-Ko (スズキイチロウ作曲、小森 ss、約14分)
8. Return (スズキイチロウ作曲、小森 b-cl、約8分)
9. Free Way II (スズキイチロウ作曲、小森 ss、約10分)

約52分


メンバーは、スズキイチロウ(eg, ag), 小森慶子(ss, cl, b-cl), 磯部ヒデキ(b), 金子清貴(dr) の4人、毎月第3日曜日に入谷なってるハウスで月例ライヴを行なっていますが、先月は、小森さんが渋さ知らズのライヴ@08/22 青山 CAY(イチロウさん曰く”出稼ぎ”)の為、欠席でしたので、久々の感が有ります。本日は、東京 JAZZ 2004Expresso GONG / GONGZILLA @初台 The Doors を振り切って足を運びました。と申しますより、個人的にはイチロウQのライヴだったら、何を置いても駆けつけたい思いが強いですね。日本ジャズ/フュージョン・シーンの”良心”とでも呼びたい程の素晴らしいカルテットで、本当に心に染み入るイチロウさんのオリジナル曲を中心に、4人の卓抜した技量と豊かな歌心を有する優れたミュージシャンが、今あるべき音として、繊細かつ丁寧に毎回演奏して下さいます。しかも、毎回趣向を凝らして、丁寧なセットと編成、アレンジを考えて下さるので、月一の月例ライヴが楽しみで仕方ないのですね。本日も、イチロウさんは、Gibson ES-335 に加えてガットギターを持ってきて下さっていますし、小森さんは、Soprano Sax, Clarinet, Bass Clarinet の3本を持ってきて下さっています。磯部さんはいつも通り、Scott LaFaro を彷彿とさせる Uplight、金子さんは、見た目も清々しい白のドラムセット、オーソドックスながらオープンハンド気味に叩くため、シンバル位置に特徴が見て取れます。1曲目は行き成り熱い「Hobo Brazil」、磯部さんのしなやかでスウィングするベースソロから導入していました。元々、サンバ/ボサノバ風のテーマをモチーフとしたため、このタイトルとなっているそうですが、色々な変遷を辿って(テーマに絡む 7/8, 2/4 の変拍子が原因?)現在の熱い、フリーなスタイルになっているようで、結果的には、先鋭的で瑞々しい、今あるべき”音楽”となっている気がします。2曲目は本日初御披露目の新曲「Round in cape」、イチロウさん曰く「とても優秀なメンバーなので、ものの10分もあれば、新曲もものに出来てしまう」とのことで、事前の譜面配布等の無い、本日リハ一回のみ経由の演奏のようですが、冒頭の金子さんのドライヴ感溢れるフィルから、堪らなくカッコ良く曲に入っていき、爽やかな潮風を運ぶような小森さんのソプラノと、流麗なイチロウさんのパッセージが美しく軽やかに重なり、磯部さんのベースが柔らかく確実にランニングして、疾走感溢れる曲と演奏に仕上がっています。とてもリハ一回経由のみの演奏だとは信じられないほどに完成されている姿を目の前にすると驚くばかりです。と同時に、イチロウさんのメロディメイカーとしての溢れる才能にも改めて敬服します。続く3曲目は、まだタイトル無しで、「0619」と書いた日で呼んでいるリリシズム溢れるバラードの新曲です。本日は、ES-335 を用いてのエレクトリック・バージョン、小森さんの深い情感漂う Clarinet とイチロウさんの哀愁の調べが、美しく絡まり、深く心に染み入ります。1部最後は、イチロウさん曰く「ジャズ・ギタリストと名刺に書いているので、偶にはジャズらしい曲を、とは言っても枯葉とかではなんなんで、Speak Like a Child を」とのことで、Herbie Hancock の「Speak Like a Child」。もう、30年以上前の曲になってしまいますが、溢れる歌心はそのままに、しかし、しっかりと今あるべき音、この4人でこその演奏に仕上がっていたように思います。素晴らしい演奏でした。2部は、イチロウさんが単独でステージに立ち、「前回、小森さんがお休みのため、3人でやりましたので、では今回は私と小森さんの2人でデュオをやろうと言うことでやりますが、その前に1曲ソロをやってから」とのことで、イチロウさんがガットギターによるギターソロを演奏します、曲は何とも嬉しい Pat Metheny の「The Road To You」、まさに Pat のバリトン・ギター1本による「One Quiet Night」での演奏を彷彿とさせる素晴らしい演奏でした。サウスポーの Pat Metheny、やはりこの言葉はイチロウさんにこそ相応しいことを改めて実感しました。そして続くは、2人のデュオ!実は、個人的に、最近嵌って聴いているのが超一流ベテラン・クラリネット奏者の Paulo Moura と、若き天才ギタリストの Yamandu Costa のデュオによる「El Negro Del Blanco」(リンク先で視聴できます、ポルトガル語が分からなくても Windows Media Player があれば問題無し)でして、まさに心密かに望んでいてたこの御二人のデュオによる演奏が聴くことが出来るとは感無量です!(次回は是非とも小森さんにはクラリネットで臨んで欲しいところです)簡単なテーマを事前に書いていただけの即興演奏ですが、御二人の瞬間的なメロディ・メイカー/サウンド・クリエイターとしての溢れる才能が、美しいサウンドとして昇華され、具現化されていた素晴らしい即興演奏でした。このまま、このデュオとしても別枠で活動を始めて欲しいと切に希望します。続いては、磯部さんと金子さんを加え、カルテットに戻って「Boo-Ko」、テーマが奏でられつつ、メンバーそれぞれが徐々に別れていく、個々に分散しつつも絶妙な距離感と緊張感で、楽曲全体の広がりは持ちつつ決して散漫にはならず、瑞々しい音と涼感を伴った音空間を構築する。そして、時折4本に別れた支流がまた合流するかのように交わり、テーマを奏でつつ音の奔流を作り出す、やはりいつ聴いても素晴らしい演奏です。本当にオーネット・コールマンの哲学が、40年以上も経て、異国の地日本で花開いたかのような素晴らしさ、心の底よりオーネット・コールマンご本人に聴いて欲しい素晴らしい演奏です。続いて、イチロウさんが亡きご両親への想いを綴った傑作バラード「Return」、このもの悲しくも温かみ溢れる至上のサウンド、いつも聴くたびに涙が頬を伝うのを止めることが出来ません。イチロウさんのリリカルなパッセージを小森さんの深く、温かいバスクラサウンドが優しく包み込み、磯部さんのメロディアスで柔らかいベースが更にその回りを包み、金子さんが繊細なタッチで全てを受け止めるリズムを構築する。まさにスズキイチロウ・カルテットの真骨頂的な演奏で、聴く者全てを魅了します。メンバー紹介の後、最後は「Free Way II」、この清々しい清涼感に溢れ、疾走感を有する軽やかな曲と演奏でライヴを締め括ります。本当に心の底から楽しめる今あるべき先鋭的な音楽を奏でるスズキイチロウ・カルテットからは今後も目が離せません。このカルテットの素晴らしさを広くシーンに知らしめるためにも、CD 等の音源化、切に希望いたします。次回のライヴは 10/17(日) 20:00 〜 これほどの高クオリティでチャージ 2,000円は、いつもながら、本当に申し訳ないほどにありがたい限りです。興味と機会がある方は、是非とも毎月第3日曜日定例の入谷なってるハウスでのイチロウQのライヴに足をお運び下さいませ。

追記:
何と、次回の月例ライヴの前日、10/16(土)に成田山「御利生祭」(成田の歴史を再現する事により、市民の郷土への再認識と国際社会へ向けて成田の情報を発信し、商店街の活性化を図るため開催しているそうです)にスズキイチロウ・カルテットが特別出演するらしいです!要チェック!

「御利生祭」
開催日:10月16日
開催場所:表参道特設ステージ
問い合わせ先:成田商工会議所
TEL. 0476-22-2101


n.p. Paulo Moura e Yamandu Costa「El Negro Del Blanco」