09/10(土) 黒田京子トリオ@仙台ギャラリー蒼sou

09/10(土) 黒田京子トリオ@仙台ギャラリー蒼sou に行って来ました。先ずはセットから、

1st Set:
01. Drum Motion (富樫雅彦作曲、約7分)
02. All Things Flow (翠川敬基作曲、約9分)
03. Link (翠川敬基作曲、約17分)
04. Los pajaros perdidos 〜迷った小鳥〜 ( By Astor Piazzolla、約7分)
05. Check 1 (翠川敬基作曲、1st 収録、約7分)

約55分

2nd Set:
06. Sketch 2 〜 Sketch 3 (富樫雅彦作曲、約9分)
07. ガンボスープ (翠川敬基作曲、新曲、黒田 pf -> acc -> pf、太田 vn -> daf -> vn、約14分)
08. Spleen ( By Richard Galliano、約9分)
09. para cruces (翠川敬基作曲、1st 収録、約6分)

Encore 1:
10. Tutti a Venere Il Rex ( By Nina Rota、約4分) from Federico Fellini's「Amarcord」

Encore 2:
11. Waltz Step (富樫雅彦作曲、約6分)

約65分


黒田京子トリオ:
黒田京子(pf, acc, vo, etc. )
翠川敬基(vc),
太田惠資(vn, vo, daf, etc.),


黒田京子トリオ、今年一月に続いての2度目の仙台公演、”「Do You Like B ?」発売記念ライブ”と銘打たれた本日のライブ、会場のギャラリー蒼sou を埋め尽くす観客からの熱狂のアンコールに黒田京子トリオとしては異例の Double Encore に応える大盛り上がり、素晴らしいライブでした。本日の MC は黒田さん、ご本人は MC が苦手と仰いますが、丁寧な語り口で気遣いを伴っての MC は、黒田さんの人柄が反映され、黒田京子トリオのCD発売記念ライブの MC としては、非常に良かった気がします。メンバー紹介に続いて、コール無しで「今日はこの曲から行きます」、翠川さん、太田さんがボディを叩いてパーカシッヴにポリリズミックな空間を構築し、黒田さんもスタッカートを効かせたフレーズで合わせる。その上で、太田さんがターラ風に「ダーディンディンナー」とヴォイスを乗せてきて、それに呼応するように黒田さんのリリカルなフレージングで曲にフィルイン、富樫さんの「Drum Motion」ですね、冒頭の入り方から斬新過ぎるほどの「Drum Motion」で、震えが来るほどのカッコ良さ、最後にメインメロを持ってきて閉めます。続く曲は翠川さんが持って来られた新曲「All Things Flow」、翠川さんの微分音によって構築された妖しげな雰囲気漂う音の空間を更に太田さんと黒田さんの即興詩によるやり取りが妖しく彩る、時間と空間の感覚が朧気になり、古いようでいて新しい、新しいようでいて悠久な時が漂うな不思議な演奏、これもまたこのトリオの真骨頂の一つ。「ちょっと前の新曲」とコールされた翠川さんの「Link」が続く、太田さんの「Link」のホーミーを絡めた連呼で曲が始まり、黒田さんのドビュッシー風な印象派風パッセージが太田さんのヴォイスに愁いを帯びつつ絡んでくる。満を持して翠川さんのメインメロフレーズが舞い降りるように流れ、太田さんと黒田さんも静かに合わせていく、この音像の美しさはもはや罪です、人類が深く背負った原罪の如き深刻な愁いが3人の織り成す音でものの見事に表現されているかのよう、太田さんが切り込むようなフレージングで場面を切り替え、畳み掛けるような展開となった後半部も冴え渡り、素晴らしい演奏でした。続いては、ガラッと雰囲気を変え、ピアソラの「迷った小鳥」、溢れんばかりの情熱表現に彩られた美しき演奏に完全に魅せられつつも、間奏部にては、太田さんと翠川さんが取り寄せの様なフレージングで小鳥が迷った様子を表現し、太田さんが「道に迷った小鳥は君達かな?」と語りかけ、それに呼応するかのように黒田さんがピアノ表現の美しさを最大限に出し切ったかのようなリリカルなメインメロをダイナミックに持ってきつつ、演奏をフェイドアウトさせる。「ここでようやくCD収録曲です」との黒田さんの MC により1部最後の曲「Check 1」、こちらは、CD収録に近い形で幕開けるも、間奏部からの展開は斬新そのもの、最後にメインメロに戻りあっさり目に演奏を切り上げ1部を閉じる。休憩を挟んで、第2部、幕開けは富樫さんの「Sketch 2 〜 Sketch 3」をメドレーで、冒頭の微弱音による繊細で豊かな表現は、ものの見事に富樫ワールドを表現し、かつ黒田京子トリオならではのオリジナリティも盛り込まれており、その中を徐々に太田さんのメインメロが切り開いて、黒田さんのパッセージと翠川さんのランニングを呼び込む、夜の帳が開き、煌びやかで美しい朝焼けのような音像が広がる様は実に美しい。続いては、翠川さんの新曲「ガンボスープ」、大らかなアフロテーストに溢れた傑作で、毎回(と言っても2回目?)、太田さんの即興ヴォイスがアフリカの怪鳥家族物語を橋田壽賀子バリに描く様がまた素晴らしく、それもあってか曲の演奏前に翠川さんから「太田惠資に捧げる」とのお言葉がありました。どうやら今回は、家族の崩壊は回避され、めでたしめでたしの様子、それにつけても太田さんのアフロテーストたっぷりのヴォイスは素晴らしく、翠川さんの伴奏を伴ってのパフォーマンスに聴き入っていた黒田さんが、その展開を受け、2人を連れ立ってメインメロに導入していきます。その途中の黒田さんと太田さんのヴォイスの掛け合いも見事に傑作曲の快心の演奏を纏め上げます。続いてはピアソラも絶賛したと言われる天才アコーディオン奏者、Richard Galliano のペンによる「Spleen」を取り上げます。このトリオが取り上げるタンゴ系の曲は、それ程一般的には認知されていないながら、正しく隠れた名曲を取り上げ、そのモチーフがトリオの中に吸収され、トリオとしてのアイデンティティと見事なまでに融合しつつ、超一流の腕で巧みに仕上げられる様には常に感動を覚えます。ラストは、「結局、CDからは2曲しか演奏できませんでしたね、良かったら明日の盛岡に是非いらして下さい、車1台に4人分乗して来れば何も怖いものは無いというところですので」との黒田さんの 言葉に続いて「para cruces」、演奏の度に毎回色合いを変えながら、1st Album の冒頭を飾るこの翠川さんのペンによる曲、本日も見事なまでに1部2部全体の纏め上げ、象徴するかのような演奏、素晴らしかったです。当然収まりがつかない観客からのアンコール要請を受け、Nina Rota の曲「Tutti a Venere Il Rex」、フェリーニの「Amarcord」で使われていた曲で、「ブンチャカものですので、皆さんもご一緒に」の黒田さんの MC を受けて、3人の演奏はここでも冴え渡っていました。本来なら、ここで終わりなるのですが、仙台の観客の皆さんはとても熱いですね、熱狂の中再びアンコール要請の拍手が鳴り止まず、黒田京子トリオとしては異例のダブルアンコールに応えることになります。最後は、富樫さんの「Waltz Step」にて、融け入る様に美しい音像を創出し、余韻を残しつつライブを締め括ります。相変わらず素晴らしい演奏でした。興味と機会をお持ちの方は、是非とも黒田京子トリオのライブに足を運び、この奇跡の音を体験して下さいませ。


n.p. 黒田京子トリオ「Do you like B ?」